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味噌汁を腐らせた。ついそのまま放置してしまったのだ。鍋の中に白いねばねばしたえぐい繊維の集合体のような黴が増殖していて、流し台の前でうわあああっと恐れおののきその気色悪い見た目と漂ってきて鼻に刺さる腐敗臭に思わず嘔吐しそうになり身体中に蕁麻疹が湧いて、お願いっお願いっ、と妻にそれを流し台に取り付けた小さな塵入れに捨ててもらい、妻の背中に隠れるようにして、無理無理無理、って絶叫していた虚弱な馬鹿者の俺。味噌汁の反抗、に負けた。
このまま負け犬で良いのであろうか。果たして。俺もそれじゃあ褌締めて、と世間に反抗的に接する為に、反骨の♂になる為に、黒髪の要所要所白いメッシュを入れておらおらの心、の予定思い切り狂い果てて、いつの間にかだらしなく日々増殖を遂げる白髪のせいでそれすら叶わなかった。反抗的、反骨の ♂、それ以前の問題、毛髪で洒落こく事さえも駄目じゃった。結果としてメッシュを許さぬ姿勢を貫くこととなった、てめーの毛髪の反抗に負けた。 午後は確かに暖かい、秋晴れ、かも知れない、けど、朝夕の涼しさがいよいよ冬のそれになってきてさらにいよいよ今日などは寒くって仕方なく、つまり寒さの反抗に負けた。ので。まあそれは日本に於ける自然の摂理というかまあなんだかんだとさささ寒くってもー駄目だとかなんとか、言っていてももっと己が可哀想なだけなので、暖かいフライトジャケット、所謂MA-1を着用、ふふふん寒さよかかってきなさーい、などとまるで勝利者の僕。ところがどういうわけかいつもの地下鉄に乗れば今度はそれが災いとなり、ずばりちょー暑い。かなわん。結果として季節の寒さに反抗した地下鉄、にも負けて。 そういえば昨年冬だったかの不忍池、今日着用しているMA-1にあまりにもまじであまりにも絶望的な量の鳩の糞、ばっしゃんて音したし、ちょうど左胸の辺りをふざけた白い糞がまるで広島風お好み焼きを拵える時の鉄板に薄く白い水で溶いた小麦粉をおたまで押し付けてくるーりと円上に薄く敷いたそいつをぎしゃっとやったような無様さ、あん時の周囲の人達、うわあ…、とそれ以降の、あまりにも可哀想な俺の姿に、言葉を失ってしまいました、同情したいけどうわあ…、みたいな嫌あな沈黙、そのど真ん中で呆然とした一瞬を忘れられない。直後はっときてぐっときた俺は激昂、しかし周囲の目の手前暴れまわるわけにもいかずに、隣で同じように糞をつけられた妻に哭きそうになりながら、ウェットティッシュを恵んでもらってそれで数時間かけてその糞を取り除いたあの日の夕方、その後雨に降られてしまいました。 負けっぱなしダス。でももう負けない。鰯雲を眺めて。ところが曇天故、見えないの、鰯雲。ああ、負けた。
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